ワセリンで行う傷の応急処置

湿潤療法、うるおい療法、ラップ療法って言葉、聞いたことありますか?専用の保護材やワセリンなどを使って、傷口を乾かさずに治療する方法です。治りが早い、かさぶたを作らないから痛くない、傷跡が残りにくいという理由で注目を集めています。
しかし予備知識なしの応急処置は、かえって傷を悪化させることがあります。湿潤療法に基づいた処置をする際は、正しい知識を得て行いましょう。
湿潤療法の原理
皮膚には傷口を自分で治す力が備わっています。傷口ができると出血し、やがて固まります。さらに時間が経つと、傷口に透明な汁が浸みてきます。
この浸出液は、傷の修復に必要な細胞を呼び寄せる物質がたくさん含まれてます。浸出液は死んだ細胞と新しい細胞の入れ替わりを促進して、傷口の治療を促進させる役割があるのです。
ところが旧来の常識で傷口を消毒すると、浸出液や新しい細胞を破壊します。浸出液のない傷口は乾燥してかさぶたを形成。傷の回復に長い時間がかかって化膿を引き起こしたり、跡を残すことがあります。
それなら消毒をやめて、傷口を乾燥させないように保護しよう。というのが湿潤療法のあらましです。
湿潤療法で傷を治す医療用品
湿潤療法のための医療用品はいくつか市販されてます。身近なのはキズパワーパッド。指先、小さな傷口用サイズです。
広範囲のすり傷にはプラスモイストP3が便利です。大きさは125mm×125mm。ハサミで必要な大きさにカットして傷口にあて、絆創膏やテープで固定します。
ラップ療法による応急処置
専用の治療材をすぐ用意できない時は、家庭用のラップとワセリンで代用できます。
1. ケガをしたら、傷口からの出血が止まるのを待ちます。土などで汚れている場合は、水道水で洗い流します。異物があれば取り除きます。
2. ラップを傷口より大きく切り、白色ワセリンを薄く塗る。
3. ワセリンを塗った面を傷口に当てて、絆創膏で固定する。ラップの端から浸出液がもれることがあるので、ラップの上からガーゼを重ねて包帯を巻きます。
4. ラップは1日2~3回交換します。傷周辺がぬるぬるしたら交換のサイン。ガーゼと包帯も1日に1回は交換します。放置するとあせもができるので、夏は気をつけましょう。他の注意点はこちらのページをご覧ください
注意点
ラップとワセリンによる処置は、応急処置に留めましょう。
食品用ラップは治療目的で作られていないため、浸出液が多いと細菌繁殖が起こる可能性は否定できません。また水分を通さないラップの長期使用は、あせもの心配があります。
湿潤療法用の保護材なら水分を吸収しつつ、傷口を乾燥させません。湿潤療法で傷を治したいなら、キズパワーパッドなどの市販品を利用してくださいね。
こんなケガはすぐ病院へ
深い傷、面積が大きいヤケド、大量出血を伴うケガ、動物に噛まれた傷はすぐに病院へ行きましょう。ワセリンは治療の妨げになる場合があるので、塗ってはいけません。
経験したことのない傷やヤケド、アクシデントによるケガは病院の診察を受け、骨などに異常がないことを確認してから湿潤療法を選択しましょう。
参考:湿潤療法により、痛くなく、早く、きれいに傷を治す(京都逓信病院)、NPO湿潤治療(モイストケア)を推進する会 – ケガやヤケドの応急処置法、湿潤療法を行う医療機関の一覧など